【読書メモ】地球から来た男|星 新一(角川文庫)
星新一のショートショート『地球から来た男』の読書メモです。
本の情報
基本情報
書籍名 | 地球から来た男 |
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著者名 | 星 新一 Shinichi Hoshi |
出版社 | 角川書店(角川文庫) |
発行日 | 昭和58 (1983) 年5月25日 |
改版初版発行日 | 平成19 (2007) 年6月25日 |
内容紹介(裏表紙より)
おれは産業スパイとして、ある研究所にもぐりこんだ。だが内部の警戒は厳重で、たちまちパトロールの守衛につかまってしまった。保安部門の責任者は秘密を守るために独断で処罰するという。それは、開発途上で放置されたテレポーテーション装置を使った、地球外への追放だった。気づくと、おれは野原に横たわっていた――。奇妙な運命に翻弄される男達を描いた傑作ショートショート集!
解説・桜庭一樹
引用元: 『地球から来た男』 裏表紙
印象に残った箇所を抜き書き
「はあ。で、高いんですか、料金は」
紳士は青年に椅子をすすめて言った。
「そう気にすることはない。景気のいい人なら、こんなところへ来るわけがない。高くしたら、やっていけないよ。つまりは、人助けだ……」
高級ウイスキー一本分ぐらいの金額だった。青年は身を乗り出す。
引用元: 『地球から来た男』 P186
「高級ウイスキー1本分くらいの金額」と、あえて具体的な金額を書かないところが、時代を超えても古く感じさせない理由のひとつなのかなと。
その青年はマンションの一室を自宅としていた。三十歳ちかいが、まだ独身。つとめ先は小さな貿易会社。大商社が手がけないようなものを狙って積極的に扱い、かなりの利益を上げていた。ボーナスも高額で、彼もマンションを買うことができたのだ。
引用元: 『地球から来た男』 P239
物語の冒頭部分から抜き書き。洗練された簡潔な表現で人物紹介がされている。そして、これもまた特定の時代を感じさせるワードを極力使わないようにしているように感じた。
星新一のショートショートは、この世にやってきたとき、新しいものだった。誰にも真似のできない異能だった。新しいものは常に注目の的になるが、時を経て普遍的なものになったとき、初めて本物になれるのだろう。
引用元: 『地球から来た男』 解説・桜庭一樹 P294
本当にそう思います。