【読書メモ】きことわ|朝吹真理子(新潮文庫)
朝吹真理子さんの小説「きことわ」の読書メモです。
本の情報
基本情報
書籍名 | きことわ |
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著者名 | 朝吹真理子 |
出版社 | 新潮社(新潮文庫) |
発行日 | 平成25年(2013年)8月1日 |
内容紹介(裏表紙より)
貴子と永遠子。葉山の別荘で、同じ時間を過ごしたふたりの少女。最後に会ったのは、夏だった。25年後、別荘の解体をきっかけに、ふたりは再会する。ときにかみ合い、ときに食い違う、思い出。縺れる記憶、混ざる時間、交錯する夢と現。そうして境は消え、果てに言葉が解けだす――。やわらかな文章で紡がれる、曖昧で、しかし強かな世界のかたち。小説の愉悦に満ちた、芥川賞受賞作。
引用元:『きことわ』 朝吹真理子 裏表紙
抜き書き
二十五年以上むかしの、夏休みの記憶を夢としてみている。つくられたものなのかほんとうに体験したことなのか、根拠などなにひとつ持ちあわせないのが夢だというのに、たしかにこれはあの夏の一日のことだという気がしていた。かつて自分の目がみたはずの出来事にひきこまれていた。なにかのつづきであるかのようにはじまっていた。自分の人生が流れてゆくのをその目でみる。ほとんどそのときそのものであるように、幼年時代の過去がいまとなって流れている。
引用元:『きことわ』 朝吹真理子 P6
冒頭のところ。永遠子が夢を見ている様子の描写。子どもの頃の夢を見ることってたまにあるけど、そのときの感覚が見事に文章として表現されているなと思いました。